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KEIEISHA TERRACE連載:戦略HRBPから見た、人・組織・事業・経営の現在&これから                                                 第2回 「この指とまれ」の組織開発論:With & Afterコロナの経営者・人事に期待されるミッション編

 本記事は、KEIEISHA TERRACE連載:戦略HRBPから見た、人・組織・事業・経営の現在&これから 第2回 「この指とまれ」の組織開発論:With & Afterコロナの経営者・人事に期待されるミッション編より転載を行っております。*1

 

「こんにちは。お元気ですか。先週末はご家族でキャンプに行くとおっしゃっていましたね。いかがでしたか。」

「いやー、楽しかったですよ。下の子のキャンプデビューだったんです。」

「お子さんの初のキャンプだったのですね!そうですか、初めて一緒に火を起こして食べるBBQは格別な味だったでしょうね。あなたもゆっくりできましたか。私は先週バイクでツーリングに出かけましたよ。海際を走りながら風を感じるのは、格別な想いでしたね。」

「えー、桜庭さんバイクも乗るんですね。僕もです。是非今度お気に入りのコース一緒にツーリングしましょうよ。」

「あ、是非是非。今度一緒にバイクで出かけたいですね!」

これ、ちょうど先週私が定例の1on1(個別の面談)で、ある企業の事業本部長と交わした最初のオープニング対話の内容そのままです。大体私の1on1は、こういったパーソナルな会話でスタートします。

時には‘締め切り’‘タスク’‘数字達成’‘評価’などのキーワードを使わずに話すことの大切さを、特に今の時代感じるのは私だけでしょうか。
リモートワークの環境で、「あの、ちょっと、いい?」の声掛けや空気を感じ取って話しかけるチャンスを作ることは、結構至難の業だと思いませんか。あえて何かトピックがないとウェブ会議の招待をしづらいという声も、周りでよく聞かれます。チームメンバーによっては、孤独感、閉塞感、不安感を感じることもあるようです。

そういった中で、私たち経営者や人事を担う者は、どのような職場環境を開発していけばいいでしょうか。知らぬ間にチームメンバーの心が離れてしまい、バラバラになってしまうのではないか、という焦燥感や、組織としての一体感や結束をどのように高めていけばいいか、どこから手を付けていいか頭を悩ませていらっしゃる方から、最近はよくご相談をいただきます。

コロナ下・リモート環境でも成長する組織であるために、まず経営者が着手すべきこと


前回は、コロナの影響下でリモート環境での仕事をする機会が圧倒的に多くなる中で、組織のあり方やチームとの関わり方、仕事の進め方、お互い仕事をする間柄での期待値を正しく設定する、などの仕方は、コロナ前の組織体とは変わってきていることはお話ししました。

同時に、このような時代にあっても、経営状況を見ながら、経営判断をスピーディーにしていかなければいけないという中で、リモート環境下でのチームマネジメントや、お互いの信頼関係の質をキープするために、チームメンバーのエンゲージメントが下がらないように何ができるか、といった課題も浮き彫りになってきました。

ウェブカメラを通して顔が見えたとしても、なかなか空気感や、言葉では伝えられない雰囲気など、隣に座っていれば五感を通じてわかることが伝わりづらくなっています。前回の話にもあったように、顕在化していなかった組織やチームの関係の質が、嫌というほどここで露呈しているケースもあるように見受けられます。
頼もしいのは、多くの経営者や人事を担う皆さんは、そのような状況を看過しているわけではないということです。コロナ前から、そしてコロナ後も、なんとか起死回生を図ろうと果敢に様々な事柄に取り組んでおられることは、間違いないと思います。

ところが、最近ある企業の経営者と対話をしていた時に、「桜庭さん、うちは何とかこんな状況でもあきらめずに、社員の幸せを一番に考えて、本当に色々な施策をやってきたんです。1on1やジョブ型の評価制度、OKRを入れて、ピアボーナスのシステムツールもお金をかけて導入しました。定年制度を撤廃し、フレックス制も昨年導入しました。でもね、いくら良かれと思って色々なことをやってみても、経営者の一人よがりでやっているように感じている社員も少なくないんです。とてもむなしい気持ちになりました。コロナのこともあって、大変な時期を共に乗り越えるために、自分としてはこのどんよりした空気を何とかしたいと思っていますが、社員に意図が伝わっていない中で、また新しいことをしていくという勇気がなかなか持てないんです。どうしたらいいでしょうね。」というご相談をいただきました。

どうすれば、この時代においても組織という有機体の進化をあきらめずに、持続的な成長を遂げる組織として、足並みを揃えポジティブなエネルギーを同じベクトルに向けることができるのでしょうか。経営者や人事の担当者からすれば、頭を抱えながら何から一体手をつけたらいいのか、優先順位が非常につけづらくなっています。さらにこの時代の不透明さが拍車をかけて混乱を生み、結局のところを何から手をつけていいのか分からず、前に踏み出せずにいるという苦悩も少なからず感じます。

そういった状況に直面したら、「何を」したらいいのかではなく、あえて「なぜ」というキーワードを、この時代の中だからこそ、組織が前に一歩踏み出せる勇気を持たせるために、経営者や人事の担当者が自分たちに向けて投げかけてみるとよい、コーチング・クエスチョンについて考えることから始めましょう。

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「なぜ私たちはここにいるのか」というパーパスに立ち戻る


今この混迷の時期にあるからこそ、改めて起源に戻り「WHY(なぜ)」を問いませんか。
なぜこの会社・組織は存在するのか。どのような社会に対して善を成すことを目指して生まれた組織であったのか。組織の志は何であったか。創業者の想いはどのようなものであったか。なぜ私はこの組織に参画することを決めたのか。なぜ私はまだこの組織に居続けるという選択をしているのか。どのように私の志は、この組織の志とつながっているのだろうか。

今一度、組織レベル、チームレベル、社員個人レベルで、「パーパス(存在意義・志)」へ立ち戻ることができたのであれば、自ずと次に「WHAT(打ち手)」:そこに対して、何をすれば今の組織課題を解決できるのかが、見えてきます。
その組織が歩んできた歴史の中で、このパーパスの重要性がどこかで忘れ去られてしまっていることもよく見受けられます。パーパスを失った組織やチームは、糸の切れてしまった凧と同じで暴走を始めますし、知とエネルギーの分散が起こり、そこにいくら労力をかけても、得たい結果につながることは難しくなります。

具体的な組織開発のアイデアとして、一つ提案をさせていただけますか。

先述したような事態から抜け出すには、今まさに一生懸命手当たり次第投げている「球」を一旦手を止めて投げるのをやめましょう。
まずは深呼吸。そのあと、今一度原点に立ち戻って、今更恥ずかしいと思うかもしれませんが、経営メンバー、社員との対話の機会を設けましょう。その対話を通して、「なぜ私たちはここにいるのか」というパーパスに立ち戻る‘場’を作ります。その場を通して、その組織のDNAを再構築・思い出させていくという組織開発の狙いです。

確かに、なかなかきっかけがない、話すトピックがない、解決する課題がなければ、リモート環境の中でそういった対話の場や人と繋がるということ機会を、経営者や社員自らが作り出すのは、心理的にもハードルが高くなりがちです。

そこで、人事を担うHRの皆さんの出番です。組織開発は、何もお金をかけてツールや制度を入れることだけではないのです。様々な組織を取り巻く環境の変化を敏感に感じ取りながら、有機体である組織の成長を段階的に促していく、いわゆる「脱皮」を促していくのが組織開発のパーパスですから、もし組織がその存在意義を見失っているのであれば、そういった経営陣と社員の志の架け橋になることも、立派なHRのパーパスです。

例えば、ある組織では、先ほどの存在意義・パーパスに立ち戻ることの大切さを経営者が自らの言葉で訴えかけるニュースレターを発行し、そのパーパスを社員一人ひとりが自分のパーパスとつなげたエッセイを提出するキャンペーンを実施しました。そのエッセイでは、自分がこの組織で誇りに思う3つのことについて書いてもらったそうです。そのエッセイは匿名で社内イントラに掲載され、全社員から投票を経て最優秀賞には、「〇〇会社カルチャーアンバサダー」という賞を授与したとのこと。

またある企業では、パーパスとして「多様性あふれる社会を創る」が掲げられていたことから、仕事と全く関係のないところで一芸秀でている社員を募り、彼らが講師となって登壇するウェブセミナーを、HRが仕組みを作って開催しました。普段仕事でしか見えない同僚の一面が、一個人として普段と違う顔を見せながら、活き活きとお互いに成長を促していく、輝ける場所を作りお互いに刺激しあい、社内の雰囲気や互いに対するリスペクトや愛着がぐっと高まったとのこと。

答えが出しづらい世の中、時代だと感じるからこそ、あえてシンプルに、本質に立ち返ってみることが、私たち経営者、人事を担うものが持つべき視点なのかもしれません。