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ヒトは究極のマイノリティ。一人一人がアーティストだ!

一人一人が自分の可能性を開いていけば、相乗効果で世界は変わっていく。
そんなメッセージとともに、さまざまな“越境の場”を提供している株式会社eumo (ユーモ)。

共感資本社会の醸成・実現に向けた様々な取り組み活動を行う同社は、日本ではまだ事例の少ない『非営利株式会社』です。自らも「人生を楽しみ、世界を味わう」を実践している、eumo共同代表の岩波さんにお話を伺いました。

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岩波 直樹さん/オンラインにて取材

経験と経験、そして自分との統合

35CoCreation合同会社CEO 桜庭 理奈(以下、桜庭):物質的豊かさから、心の豊かさや Well-Being へと社会の価値観が変わってきていますね。生きることを楽しみ、味わえる社会のために動いている岩波さんですが、そこに行き着くまでのご自身の人生の旅路とはどういったものだったのでしょう。

岩波直樹さん(以下、岩波):親が転勤族だったため、幼稚園を2つ、小学校2つ、中学校3つと転校を繰り返していました。180°環境が変わるというのを何度も経験して、「いろいろな世界の見方があるな」というのを、身を持って知りました。ゼロリセットから交友関係を築く、つまり自分と周囲を統合させて自分のスペースをどう作るかという術を必然的に身につけてきました。今は、幼少期の体験と青年期の体験を統合している段階で、確実に仕事に繋がってきています。統合は、これからする経験も含めてずっと続いていくものだと思います。

価値観というのは自分の経験の積み重ねで形成されるものなので、原体験や自分のルーツを辿ることも重要ですよね。ネクストキャリアを考えている人はライフラインチャートを作ってみたり、それに加え、地元の文化なんかも学ぶといいでしょうね。

私自身の原体験でいうと、転校経験ももちろんですが、小学生の頃に旅行に行ったアジアの風景や実情が人生に影響を与えてくれていると感じています。当時、外国では同い年くらいの子供が物乞いをしていて、生まれた場所や環境で生き方や認識している世界がまったく異なるということに衝撃を受けました。自分の価値観では測れない世界があることを知ったことが、「変わり続ける世界を見続けることが生きる意味の一つ」だと思う様になったきっかけだと思います。

絶対価値を語る人に惹かれた銀行員時代

桜庭:事業をしたいという志は、いつごろ芽生えたのでしょう。

岩波:やっと定住生活にはいった高校時代と、自由に過ごした大学時代を経て、就職活動時期に「こうしなければいけない」という社会の常識に縛られていくことに違和感を感じ、自分で事業をしたいと思うようになりました。しかし、そのためにはお金の流れを知ったり、力をつけたりしなければと思い、まずは銀行へ就職しました。

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新人は中小企業の担当が多く、さまざまな経営者と直接会って話す機会に恵まれました。もともと好奇心は旺盛なほうなので、業績や融資の話もするのですが、その人がどんな人で、なぜその事業を始めたのかなど、経営者自身のことを積極的に聞いていました。そんな中で、経営者には、売り上げや社員数をこれぐらいまであげたいといった現代社会的成功を目指す相対的価値を持つ人と、世の中にこんな価値があると面白いよね、いいよねということを共感してもらって、結果ビジネスになっている絶対的価値をもつ人の2タイプにざっくり分かれると気付いたんです。と同時に、私は、決して業績が良くなくても、生き生きしていた絶対的価値をもつ経営者に惹かれたのです。自分もこんな生き方がしたい、と。

ちょうどその頃は、行内でも合理性ばかりが求められて、自分の感覚でものを言うと、「お前の感覚なんて聞いてない」と言われることが多く、成績はあげているものの、「自分は一体何をやっているんだろう…」と、自分が何者であるかがわからなくなってきていました。それでも当時は、数字的な意味でビジネスを伸ばしていく中にもヒューマニティがあったギリギリの時代でしたし、今でも銀行時代の経験にはとても感謝していますが、このままいると相対価値に飲み込まれそうだと感じ、3年経験したら次の道を探そうと思っていました。

「社員を幸せにする」とは?

桜庭:アイデンティティクライシスが起きていたわけですね。合理性と人間性のどちらが大事か?となった時に、どういう決断をされたんですか。

岩波:3年したら何かやろうと思っていたので、社外の人、特にベンチャーや新しいことをしている人にどんどん会いに行きました。そんな出会いの中で、「楽しんで仕事をしている人を増やしたい」という考えを共にできる仲間に巡り会ったんです。

論語にも「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」とあるように、好きで仕事をしている人も、楽しんでいる人には敵わないんです。それって真理だなと思っていて、働く人が生き生きと働けて自分という人間をもっと味わって生きられる世界を作りたいと思うようになりました。そして、2002年に株式会社ワークハピネス(当時はまだその前身の事業)の立ち上げに参画したのです。

優先事項は「社員を幸せにする」ことですが、当時は8割の人から「何それ?逆じゃない?業績が伸びて給料が上がって社員が幸せになるんじゃないの?」と言われまして。確かにそれも間違っていないし、そのルートもあるし、会社を伸ばす方法論として合理的な部分は必要なんだけれども、そこにワークハピネスがないとサスティナブルにはなり得ない状況になってきていたんです。

未熟ゆえに表現仕切れず、実際の価値にまで落とし込めないで失敗しがちですが、本来人間は自己表現要求があるものです。現に、経済の最大化が種々の問題を生み出しているという懸念が世界レベルでなされる様になったこともあり、2015年ごろからは「ワークハピネス」という社名を見て「良い社名ですね」という人の方が多くなってきました。ただ、20年以上ビジネスパーソンとして刷り込まれたことはなかなか抜けないんですよね…。

5メートルでいい。越境すれば世界が開ける!

桜庭:組織の個から、個のパーパスと組織のパーパス…もはや組織でもなくコミュニティかもしれませんが、それらを合わせていく時代の流れには気が付きつつも、慣れ親しんだ岸から、見たこともない大海原に出ていくのを躊躇してしまっている人はどうすればいいのでしょう?

岩波:確かに、個の存在が組織の中の一つではなく、個の表現&成長の場として組織があるという時代の流れです。企業で働きつつも小舟で出ていこうかなという人も増えています。そうした、「出てみようかな?」と思っている人には、「既成概念や固定観念に縛られて出られないのはもったいないから、仲間と一緒に、5メートルだけでもいいから出てみない?意外と危険でもなく、楽しいかもよ」と背中を押す“場”を提供しています。

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ただ、人にはいろいろなフェーズがあるし、生き方の問題なので、陸の真ん中にいる人を無理矢理動かそうとはしません。共同代表を勤めるeumoで描いているのは“共感資本社会”です。あくまで“社会”であって“主義=イデオロギー”ではありません。主義だと二元論の対立を生みますが、大事なのは多様性です。資本主義的社会構造にも限界がきていて、お金の力だけではなく“共感”で人が動き始めています。自分が共感できることは何なのか?、それを知るには、越境していろいろな人と話し、自分とは違う生き方をしている人や、その生き方を知ることが大事です。

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少し目を見開いてみれば、人生の軸や生きる基準はたくさんあることがわかります。それによって、自分の可能性の幅が広がっていくんです。

組織は人を成長させる「舞台」

桜庭:そういった人が増えたとき、会社や組織、コミュニティはどう存在していればいいでしょうか。

岩波:資本主義で評価されない、つまりはお金にならないことを人はしてこなかったし、企業でうまくやっていこうとすればするほど、常識や社会システムに縛られて視野が狭くなっていくんです。

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人の成長って、見える世界の広がりであり、経験できる世界の広がりであり、それが人生の楽しみだと思うんです。これまでの中央集権的社会から、自律分散的社会になっていく中で、組織には「個が人生を楽しみ、自分の可能性を開花していくための舞台になり得る」ことが求められるし、最近のベンチャーにはそこを意識しているところが多いと思います。

世界の変わり様、在り様を、見続けていたい

桜庭:会社が成長の舞台と考えると、経営者自身も経営を楽しめそうですね。

岩波:そうですね。人とはひとりひとりがアーティストであり、究極のマイノリティなんですね。「自分という人間はどういう人間で、何がしたくて、この世界に何を表現したいのか」をきちんと確認し、時間を割くことで、世界の味わい方が違ってきます。自分も(他人も)マイノリティなんだと自覚することで他人にも優しくなれます。でも、自分の探求って、「見つかった!」「やっぱりまだ見つかってない」の繰り返しだと思うんです。これを仲間と一緒にできれば、相互的に成長していくはずです。

桜庭:真の自分の探求って、ネバーエンディングストーリーであり、ワクワクが続く源泉なんでしょうね。

岩波:人生100年時代、どこまで人生の幅、可能性の幅、経験の幅を広げられるかにワクワクしますよね。一人一人が可能性を広げていくことで世界は変わるし、5〜10年後には見たこともない世界になっている可能性もあって、それをどこまで見続けられるかっていうワクワクもあります。

私は偶発性「奇跡」を大事にしていて、それを体験することが人生の大きな意味とさえ思っているんですが、「奇跡」って合理化・計画性からは絶対に味わえない価値で、人が開いていることによって起こる「必然」なんです。

「対話」で心開き、「内省」で自分を見つめ、「越境」で多様性を知り、「具体的な行動」を経て体で学ぶ。身体知がないと真の理解はありませんから。一連のことを失敗してもいいからどんどん実践してもらえれば、自分の人生をもっと楽しめ、地球規模の生き様(在り様)にワクワクが止まらないと思います!

桜庭:岩波さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました!

 

編集後記(桜庭)

私たち一人ひとりが究極なマイノリティとして、独自性を模索していく旅は、時代として、今やっとスタート地点に立ったばかりですね。

岩波さんからは、少しでもいいから慣れ親しんだ岸から離れて、可能性の大海原へ5mでいいから泳ぎだしてみよう、という応援歌をいただきました。

時代の変遷を生きているからこそ、岩波さんがおっしゃる「次世代の社会の在り方は、自律分散的に皆が参加型で創っていくことができる」というお話に、私 自身ワクワクしてしまいます。